2008年2月7日木曜日

(08/01/24)ドル円相場の100円割れは実現するか?(植野大作氏)

(08/01/24)ドル円相場の100円割れは実現するか?(植野大作氏)

植野大作・野村証券金融経済研究所国際金融調査課長
 2007 年の為替市場では、歴史的な米ドルの暴落が進行した。昨年の米ドルは、晩秋に一時、隣国の通貨であるカナダドルに対して百数十年ぶりの歴史的安値にまで下落したほか、大陸欧州の基軸通貨であるユーロ(1999年のユーロ導入以前はドイツマルクを用いて現在のユーロに換算)や、永世中立国通貨であるスイスフランに対しても、変動相場制史上の最安値を記録する局面を経験した。年明け以降も、米景気後退懸念とそれに伴う大幅利下げ観測、産油国や新興諸国のドル離れ観測などを背景としたドル弱気論は、依然として根強い。ドル円相場についても、100円割れの実現、定着を予想する向きも少なくないのが現状だ。

ドルの対円での下落は限定的

 主要7通貨に対するドルの実効為替レート(73年3月=100)は、昨春、これまで決して割り込むことのなかった80の大台を割り込み、年明け後も統計開始(73年)以降の最安値圏で低迷している(図表参照)。

 ただし、近年、他の主要通貨市場で歴史的なドルの暴落が実現する環境下でも、ドル円相場における米ドルの下落は、相対的に軽微だ。円に対するドルの史上最安値は95年4月に記録した79円75銭であり、年明け後に記録した105円台という水準は、この史上最安値に対し、25円もの「のりしろ」を残している。

ドル全面安でも円が買われにくい理由

 歴史的なドル安が進む中で、ドル円相場の反応が鈍い背景には、(1)世界で一番低い、日本円の金利の魅力(ドルから逃避しようとする資金の行き先として、日本円よりも金利の魅力を備えた通貨は世界にたくさんある)(2)米国景気悪化懸念と同時に進行している対日景況感の下ぶれ(3)内外の金利差や人口伸び率格差に反応した本邦投資家の対外投資圧力(4)歴史的な資源価格の高騰に伴う非資源国通貨への注目度低下――などが複合的に関与していると考えられる。米景気の悪化懸念を背景に、ドル売り観測が強いのは事実だが、当面、ドルが売らやすい環境が続く中でも、円が買われにくい理由が払拭(ふっしょく)されない限り、日本円がドル売り圧力の安定的な受け皿になる余地は限られるだろう。

 実際、昨年夏場以降の円高は、日本円に対する積極的な評価を背景とした前向きな円買い需要が強まった結果生じたものではない。米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の余波が世界に拡散して不透明感が強まる中、「世の中が不安定な状況下では、借金はなるべく持たずに返してしまった方が安全だ」と考えた国内外の投機筋等が、金利の高い外貨を買うために増やしていた円の借金を一気に返済するために、外貨を売って円を買い戻したことが主因とみられる。投機筋の円借り取引の巻き戻しという後ろ向きの円買い需要は、現在一巡しているとみられ、今後は、前向きな気持ちになって長期間にわたって円を保有しようという性格の資金が増えてこない限り、これまでと同じような勢いでの円高は進みにくいだろう。

(08/01/24)ドル円相場の100円割れは実現するか?(植野大作氏)

(08/01/24)ドル円相場の100円割れは実現するか?(植野大作氏)

植野大作・野村証券金融経済研究所国際金融調査課長
 2007 年の為替市場では、歴史的な米ドルの暴落が進行した。昨年の米ドルは、晩秋に一時、隣国の通貨であるカナダドルに対して百数十年ぶりの歴史的安値にまで下落したほか、大陸欧州の基軸通貨であるユーロ(1999年のユーロ導入以前はドイツマルクを用いて現在のユーロに換算)や、永世中立国通貨であるスイスフランに対しても、変動相場制史上の最安値を記録する局面を経験した。年明け以降も、米景気後退懸念とそれに伴う大幅利下げ観測、産油国や新興諸国のドル離れ観測などを背景としたドル弱気論は、依然として根強い。ドル円相場についても、100円割れの実現、定着を予想する向きも少なくないのが現状だ。

ドルの対円での下落は限定的

 主要7通貨に対するドルの実効為替レート(73年3月=100)は、昨春、これまで決して割り込むことのなかった80の大台を割り込み、年明け後も統計開始(73年)以降の最安値圏で低迷している(図表参照)。

 ただし、近年、他の主要通貨市場で歴史的なドルの暴落が実現する環境下でも、ドル円相場における米ドルの下落は、相対的に軽微だ。円に対するドルの史上最安値は95年4月に記録した79円75銭であり、年明け後に記録した105円台という水準は、この史上最安値に対し、25円もの「のりしろ」を残している。

ドル全面安でも円が買われにくい理由

 歴史的なドル安が進む中で、ドル円相場の反応が鈍い背景には、(1)世界で一番低い、日本円の金利の魅力(ドルから逃避しようとする資金の行き先として、日本円よりも金利の魅力を備えた通貨は世界にたくさんある)(2)米国景気悪化懸念と同時に進行している対日景況感の下ぶれ(3)内外の金利差や人口伸び率格差に反応した本邦投資家の対外投資圧力(4)歴史的な資源価格の高騰に伴う非資源国通貨への注目度低下――などが複合的に関与していると考えられる。米景気の悪化懸念を背景に、ドル売り観測が強いのは事実だが、当面、ドルが売らやすい環境が続く中でも、円が買われにくい理由が払拭(ふっしょく)されない限り、日本円がドル売り圧力の安定的な受け皿になる余地は限られるだろう。

 実際、昨年夏場以降の円高は、日本円に対する積極的な評価を背景とした前向きな円買い需要が強まった結果生じたものではない。米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の余波が世界に拡散して不透明感が強まる中、「世の中が不安定な状況下では、借金はなるべく持たずに返してしまった方が安全だ」と考えた国内外の投機筋等が、金利の高い外貨を買うために増やしていた円の借金を一気に返済するために、外貨を売って円を買い戻したことが主因とみられる。投機筋の円借り取引の巻き戻しという後ろ向きの円買い需要は、現在一巡しているとみられ、今後は、前向きな気持ちになって長期間にわたって円を保有しようという性格の資金が増えてこない限り、これまでと同じような勢いでの円高は進みにくいだろう。

外為証拠金の売買高急増・金融取、07年3倍に

外為証拠金の売買高急増・金融取、07年3倍に

 少ない元手で何倍もの外貨を運用する外国為替証拠金取引(FX)の売買高が急増している。株安、低金利が長期化するなか、昨年半ばから金融市場の混乱で為替相場の値動きが大きくなったことで個人投資家が積極的に手掛けている。昨年は円・英ポンド取引が円・ドル取引を上回り、取引通貨が多様化している。ただ取引会社の破綻や不正勧誘などの問題も依然残っており、個人投資家にとってはリスクも高い。

 東京金融取引所(金融取)では、2007年の売買額が円換算で44兆円となり、06年の3倍の規模に膨らんだ。(26日 16:00)

外為証拠金の売買高急増・金融取、07年3倍に

外為証拠金の売買高急増・金融取、07年3倍に

 少ない元手で何倍もの外貨を運用する外国為替証拠金取引(FX)の売買高が急増している。株安、低金利が長期化するなか、昨年半ばから金融市場の混乱で為替相場の値動きが大きくなったことで個人投資家が積極的に手掛けている。昨年は円・英ポンド取引が円・ドル取引を上回り、取引通貨が多様化している。ただ取引会社の破綻や不正勧誘などの問題も依然残っており、個人投資家にとってはリスクも高い。

 東京金融取引所(金融取)では、2007年の売買額が円換算で44兆円となり、06年の3倍の規模に膨らんだ。(26日 16:00)
07/12/26? Nikkei Net